BNCT技術でがんに挑む。技術者たちの挑戦

私たちの革新的な技術を支えるのは、長年の経験と情熱を注ぎ込んできた技術者たちです。彼らはそれぞれの専門分野で卓越した知識と技術を持ち、互いに協力し、切磋琢磨しながら、日々より良い治療機器の開発を目指しています。

「がんで苦しむ人々を笑顔にしたい。」そんな想いを胸に、今日も研究開発に励む、そんな私たちの技術者の物語です。

旭川医科大学を定年退職後も、医学と物理の知識を生かし、がん治療の発展に尽力

2019年まで、旭川医科大学の放射線部に所属し、150名の医療技術系技師を束ねる部長として、臨床工学、臨床検査など様々な部署を統括していました。専門はがん治療、特に放射線治療装置の稼働に尽力しておりました。

医学物理士の資格も持っているため、がん患者さんに対する医療計画も作成しました。そのような病院での仕事の傍ら、大学では特別講師として教鞭も執り、医学部の学生に物理学やがん治療についての講義を行なっておりました。

医学と物理、二つの分野に精通していることが私の強みです。

新たな挑戦の地へ、BNCTとの出会い

定年を迎え、新たな章を始める時が来た頃、ふと目にした福島SIC応用技術のホームページに、私は強い衝撃を受けました。そこには、世界を変える可能性を秘めた画期的な技術、BNCTが紹介されていたからです。

私はがん治療の未来を切り開きたいという思いから、残りの人生を、この革新的な治療法の発展に捧げたいと決意し、津軽海峡を越えて北海道へから福島への移住を決意しました。

「ここなら安心して自分の治療を任せられる」と思って欲しい患者さんの笑顔を思い浮かべながら、研究を続けています。

BNCTは、中性子を照射することでがん細胞を死滅させる治療法です。その原理は古くから知られていましたが、実用化には多くの困難が伴っていました。しかし、日本の研究者たちは諦めずに研究を重ね、着実に超える課題はまだまだたくさんあります。

「最終的な癌患者の人たちをこのBNCT装置でなんとか救いたい」BNCTの可能性は無限大だと確信しています。私は、研究者として、そして一人の人間として、常に挑戦し続けたい、BNCTの開発を通じて、人類の健康に貢献できることを大きな喜びと感じでいます。

世界を舞台に培った自動車開発技術で、がん治療に新たな光を灯す。
エンジニアの新たな挑戦。

大学卒業後、自動車メーカーに入社し、ハイブリッドカーや低燃費車の開発に携わりました。自動車開発は、大規模なプロジェクトであり、世界中の競合としのぎを削る激しい世界でした。

しかし、より高いレベルで自分の技術を試したいという思いが募り、医療機器の開発という新たな挑戦を決意しました。最初は内視鏡の設計の仕事をしていました。

でも、内視鏡は観察分野で、治療ってほとんどできないんです。これでは人を救えない、その一歩手前まではできるんですけどね。どうせやるなら治療分野の仕事をしたいと思っていた時、BNCTのことを知りました。

手術室の現場から生まれたイノベーション。
患者さんと医師のために、技術者ができること。

BNCT装置の開発において、私は機械設計を担当しています。設計段階から、患者さんや医師の意見を積極的に聞き入れ、使いやすく、安全な装置を目指しています。

そのためには実際に手術室で手術を見学することで、医療現場の生の声を聞き、設計に活かすことも重要な仕事です。

例えば、医師がどのような動きをするのか、患者さんがどのような体勢で治療を受けるのかなどを観察することで、より人間工学に基づいた設計が可能になるからです。

人の命を守れる仕事ってなかなかない
多くの患者さんの命を救うことができるという大きな使命感

BNCT装置の開発は、単なる機械設計の仕事ではありません。「人の命を守れる仕事ってなかなかないと思うんです。ものづくりで、人を幸せにすることはたくさんあると思うけれど、人を守れるものってなかなかない」という思いが、私の原動力となっています。

この装置によって、多くの患者さんの命を救うことができる、という大きな希望と使命感を持って取り組んでいくつもりです。今後も、より効果的で安全なBNCT装置の開発を目指し、日々研鑽を積んでいきたいです。趣味の車いじりで得たアイディアを仕事に活かすなど、常に新しいことに挑戦し続けたいと考えています。

科学への情熱と社会貢献への意識。
研究者人生を変えた、ある国際プロジェクト。

高校卒業後、実験動物の飼育から研究補助まで、幅広く携わってきました。特に、電力中央研究所では、電磁波が生物に与える影響、特に小児白血病との関連性について、国際的な研究プロジェクトに参加しました。

この経験は、私にとって、科学的な探究心と社会貢献への意識を芽生えさせた転機になったと思います。また、電磁波の研究を通じて、癌に関する研究に深く関わるようになり、現在の会社でBNCT装置の開発に関わることになりました。

BNCTは、従来の治療法では効果が期待できない癌に対して新たな可能性を開く治療法です。この革新的な技術に携わることに大きな魅力を感じ、茨城への単身赴任を決意したんです。

実験結果に対する深い理解と責任感

私たちのグループでは、BNCT(ホウ素中性子捕捉療法)技術の研究開発において、動物実験の企画から実施、そしてデータ解析まで、一連の工程を自分たちで行なっています。

細胞培養から始まり、動物への薬物投与、解剖、そして組織の分析まで、全ての工程に携わることで、実験結果に対する深い理解と責任感を持つことができます。

装置開発と薬剤評価の連携、実験からBNCTの未来を切り開く

BNCT装置の性能評価だけでなく、新しいホウ素薬剤の評価も行っています。 細胞実験で効果が期待できる薬剤を選定し、動物実験でのその効果を検証します。

大学との共同研究も積極的に行い、最先端の研究成果を私たちの研究に活かしています。実験は、常に予想外の結果をもたらしてくれます。成功体験もあれば、失敗に終わることもあります。しかし、その一つ一つの結果が、次のステップにつながる重要なデータとなります。実験を通して、私は科学の面白さだけでなく、人生の面白さについても学びました。

BNCT装置の安定稼働を支える技術者たちの情熱
高電圧、真空、精密制御・・・複雑な装置を支える日々の努力

BNCT(ホウ素中性子捕捉療法)装置は、がん治療の新たな可能性を拓く画期的な技術ですが、その安定稼働を維持することは容易ではありません。特に、高電圧はエネルギー源であると同時に、放電現象であるアーキングを引き起こす可能性があるんです。

アーキングの原因は様々であり、部品の寿命もその一つです。技術者たちは、様々は要因を分析し、一つ一つ対策を講じることで、アーキングの発生頻度を大幅に減らすことに成功しました。

実験はデモンストレーションに向けた準備
20万ボルトの世界-特殊んあ装置を扱う誇り

実験やデモンストレーションのための事前準備も私たちの仕事です。求められるパワーが出るように装置を調整し、万全の状態で臨むことが実験の成否に大きく影響します。問題解決は容易ではありませんが、一つ一つ丁寧に解決していくことで、着実に目標に近づいていきます。

また、通常の電圧が200Kボルト程度であるのに対し、BNCT装置では20万ボルトという高電圧を使用します。そして粒子を飛ばすために真空状態が保たれているのんですが、このような特殊な装置を扱っている会社はとても希少です。私たち技術者はその扱いに大きな興味と誇りを持っています。

開発チームとの連携と治療への貢献

BNCT装置の安定稼働には、各部門とのチームワークが不可欠です。電圧を上げて安定的に動かすためには、開発チームとの連携も重要になります。

施策機の運転で不具合を見つければ、開発チームに報告し、動作確認、デバッグ、検証を繰り返す。これらの仕事は、製品開発のプロセスにおいて非常に重要な役割を担っており、製品の品質向上や開発期間の短縮に大きく貢献できていると思います。単に製品を動作させるだけでなく、製品の品質を保証し、顧客に最高の製品を提供するためにい不可欠な仕事です。

装置の安定稼働を通じて、少しでも多くの患者さんに笑顔を取り戻してほしいといつも願っています。